【書評60】戦前も2020年現在の日本も、本質は変わらない。




目次

1:本の内容

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫) おススメ度☆☆☆

第二次世界対戦の6つの作戦

※ノモンハン事件・ミッドウェー海戦・ガダルカナル作戦・インパール作戦・レイテ沖海戦・沖縄戦

を分析し、日本軍の失敗を説明しています。

2:戦前も2020年の今も日本は変わってない。

①旧日本軍と日本企業の共通点

思ったのが、この日本軍の特徴は、いまの日本の組織にも共通しているということです。

人情論や、人間関係に配慮して、

責任を追及しない、根本的な原因を追究しないところなんて、

まさしく日本軍の失敗と変わりません。

②欧米も日本も集団社会で個人社会

欧米は『個人社会』で、日本は『集団社会』と言われますが、それは間違いです。

欧米も『集団社会』で『個人社会』だし、日本も『集団社会』で『個人社会』です。

異なるのは、歩んできた歴史や、環境(天候とか地形とか)です。

そのため、欧米の国々も日本も、違う方法で発展してきたというだけです。

氷山の一角を見ただけ、

しかも一つの視点から見ただけで、欧米を『個人社会』、

日本を『集団社会』と決めつけるのは誤りです。

この本では、ステレオタイプで、日本と欧米を決めつけず、

日本軍はこうやった、だからこうなった。ではなぜこうやったのか?

という事実に基づいて分析しています。

③この本では、諸国をステレオタイプで決めつけず事実に基づいて説明している

対する、アメリカ軍についても、アメリカ軍はこうやった、だからこうなった。

では、なぜアメリカ軍はこういう方法をとったのか?

と事実に基づいて論理的に解説しています。

3:自由闊達な議論のできない日本

戦争から半世紀以上経ったから、いまの日本は違うと言い切れるのでしょうか。

私は、当時の日本軍と、いまの日系企業はとてもよく似ていると思います。

日本軍の話を聞いていると、「あれ?これ今の日本の会社じゃね!?」っと思うところが
いくつも出てきます。下の抜粋なんて、まさしくそうです。

PP.282
日本軍の戦略策定は一定の原理は論理に基づくというよりは、

たぶんに情緒や空気が支配する傾向がなきにもあらずであった。

PP287
日本軍が個人ならびに組織に共有されるべき先頭に対する科学的方法論を欠いていたのに対し、

米軍の戦闘展開プロセスは、まさに論理実証主義の展開にほかならなかった。

太平洋の海戦において一貫して示されたアメリカの作戦の特徴の一つは、

たえず質と量のうえで安全性を確保したうえで攻勢に出たことである。

数が明らかに優勢になるまでは攻撃を極力避け、物量的に整って初めて攻勢に打って出ている。

他方、日本軍のエリートには、概念の創造とその操作化ができた者はほとんどいなかった。

(中略)

事実を正確かつ冷静に直視するしつけをもたないために、

フィクションの世界に身を置いたり、

本質にかかわりない細かな庶務的仕事に没頭するということが頻繁に起こった。

PP289
日本軍の最大の特徴は「言葉を奪ったことである」(山本七平『一下級将校の見た帝国海軍』)と

いう指摘があるように、戦略策定を誤った場合でも、

その修正行動は作戦中止・撤退が決定的局面を迎えるまではできなかった。

PP315
以上あげたような日本軍の組織構造上の特性は「集団主義」と呼ぶことができるであろう。

ここでいう「集団主義」とは、個人の存在を認めず、

集団への奉仕と没入とを最高の価値基準とするという意味ではない。

個人と組織とを二者択一のものとして選ぶ視点ではなく、

組織とメンバーとの共生を志向するために、

人間と人間との間との関係(対人関係)それ自体が最も価値あるものとされる

という「日本的集団主義」に立脚していると考えられるのである。

そこで重視されるのは、組織目標と目標達成手段の合理的、体系的な形成・選択よりも、

組織メンバー間の「間側」に対する配慮である。

(中略)

これに対して、米軍の作戦速度の速さは決定的であり、

日本軍の苦心の蓄積が最後の仕上げで一挙に粉砕されることが多かった。

人間関係、とくに軍上層部・政府・大企業の偉い人達の人間関係が

重要視され、だれも重要な場面で、意見を言うことができなかったことが、

日本軍の敗北の原因だと著者は言っています。

それに対して、アメリカ軍は、優勢になるまで待ち、

人情論を排除したうえ、数々の作戦を迅速に実行した。

日本軍とアメリカ軍の差はそこにあったのだと言っています。

2020年の今、日本軍とアメリカ軍が戦うことは考えられませんが、

日系企業とアメリカ系企業が戦うことはしょっちゅうあります。

その中で、日系企業が、役員や部長課長の人間関係を気にして、なにもできない中、

アメリカ系企業が、次々に新しい策を考え実行し、その結果をもとに更に新しい施策を試す

一発あてたアメリカ系企業が、日系企業に勝つというのは、日常茶飯事ではないでしょうか。

4:日本は人間関係を意識しすぎて、逆にコミュニケーションがとれてない。

著者は、旧日本軍のコミュニケーション不足についても言及しています。

27歳のわたしは下記の引用部分を読んで、ゾッとしました。

今の日本の会社のことを言っているように聞こえるからです。

変わってないじゃん、日本。

PP.327
また、組織学習にとって不可欠な情報の共有システムも欠如していた。

日本軍のなかでは自由闊達な議論が許容されることがなかったため、

情報が個人や少数の人的ネットワーク内部にとどまり、

組織全体で知識や経験が伝達され、共有されることが少なかった。

作戦をたてるエリート参謀は、現場から物理的にも、

また心理的にも遠く離れており、

現場の状況をよく知る者の意見が取り入れられなかった。

現場からの声って偉くなればなるほど、聞こえてこなくなります。

担当者→主任→係長→課長→部長→役員と昇進していくにつれて、

現場で何が起きていて、何が問題なのか分からなくなるのです。

※映画『踊る大捜査線』で主演の織田裕二さんが、

「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ」っと言ったシーンを思い浮かべます…。

これってすごく皮肉ですよね。

組織全体のために、人間関係にギクシャクを起こさないように気を使っているのに、

それが、組織の足を引っ張っているからです。

情報共有のためには、情報発信者を責めない・称える・助けるということが

必要不可欠ということです。

今の日本の会社に、そういった風土を持った会社がどれだけあるのでしょうか。

少し悲しくなります。

旧日本軍と同じ失敗を重ねているような気がします。

5:日本の組織では、本当に悪いやつの責任を追及しない

喧嘩両成敗という言葉があります。

わたしは大嫌いです。

というのも、この言葉は、思考停止につながり、

本当に責任を取らなければならない人物の悪行を黙認することにつながるからです。

日本の会社で、たとえパワハラやセクハラがあっても、

うやむやになることが多いのは、この喧嘩両成敗という言葉があるからではないでしょうか。

個人責任を明確にし、責任を徹底的にとらせる。そこに情状酌量の余地はない。

これは、わたしがフランスで経験した、大切なことです。

なんとな~く許してしまうことはダメです。

その人物は、次また同じ過ちを犯します。

著者は、日本軍が失敗した原因の一つに個人責任のあいまいさを指摘しています。

PP.335
個人責任の不明確さは、評価をあいまいにし、

評価のあいまいさは、組織学習を阻害し、論理よりも声の大きなもの突出を許容した。

これまさしく、日本の会社ですよね。

旧日本軍と2020年現在の日本の会社って本質は変わらないじゃんっということが

よく分かります。

過去の過ちから学び取らなければなりませんね。

6:まとめ

個々の作戦(戦闘)の分析や、詳細は、本書を読めばよく分かります。

また、筆者の言いたいことは、

単なる戦闘の分析(これも歴史的に人類にとって必要不可欠ではありますが…)にとどまらず、

ではこれからわたしたち日本人はこの戦いからどう学んでいくのか?

なにを注意しなければならないのか?

ということです。

戦闘の描写や、作戦の詳細な説明は

素人であるわたしたちには難しいですが、

それでも最後まで読むと、

わたしたちに対する筆者のメッセージが伝わってくると思います。

以上です。

もっと生きやすく。

SPONSORED LINK

カテゴリー

アーカイブ

シェアしていただけるとうれしいです!